がんとは|原因、症状から治療方法まで解説します

がんとは|原因、症状から治療方法まで解説します

がんとは

私たちの体を作っている細胞の総数はおよそ60兆個にもなります。それらの細胞は常に様々な傷を受けています。傷を受けると、細胞は速やかに修復しようとします。ところが、細胞に何らかの遺伝子の異常が起こり、細胞が増殖を繰り返し、止まらなくなってしまうことがあります。そうして何年もかけてできた異常な細胞のかたまりの内、生命を脅かすものががんです。悪性腫瘍あるいは悪性新生物とも呼ばれます。がんは近くの組織に侵入(浸潤)したり、一部が血管やリンパ管を通って離れた臓器に転移し、そこでも増殖したりします。
このため、正常な組織や臓器がむしばまれ、放置すれば生命の危機にさらされることになります。

がんは増えている

医療や保健衛生の進歩で、日本は長寿国となりましたが、高齢化の進展に伴い、わが国のがんで亡くなる人が戦後、右肩上がりで増えています。ここ30年余りで心臓病、肺炎で亡くなる人も増えていますが、がんの増え方は圧倒的で、1981年以降、死亡率第1位の状態が続いています。

図1.主要死因別粗死亡率年次推移(1947年~2013年)
(公益財団法人がん研究振興財団 「がんの統計’14」)

日本全体で2013年の1年間に36万人以上ががんで亡くなっています。全死亡数の3割近くに当たります。死因第2位である心疾患の約2倍、第3位、第4位である肺炎、脳血管疾患の約3倍に及びます。がんは今後も増加が続くと予想されています。特に団塊の世代が後期高齢者の中心になる2030年頃には「がん多死時代」が到来するといわれています。がんにかかる人の数も、肺がん、前立腺がん(男性)、大腸がんなどを中心に、さらなる増加が見込まれています(図2)。

図2.がん部位別将来推計罹患数と死亡数
(国立がん研究センターがん情報サービス グラフデータベース)

発がんの要因

がんの発生(発がん)に関わる要因については多くの研究が行われています。喫煙、飲酒は様々ながんと関連することが知られていますが、その他にもがんの部位ごとに特徴的な要因の関与が指摘されています。

表1 がん種別の発がん要因
がん種 報告されている主ながん要因
口腔がん 喫煙、飲酒、熱い飲み物、ヒトパピローマウイルス感染
食道がん 喫煙、飲酒、肥満
胃がん ヘリコバクター・ピロリ菌持続感染、食塩
大腸がん 脂肪・肉類の摂取、飲酒、喫煙
肝臓がん 肝炎ウイルス持続感染、喫煙、飲酒
膵臓(すいぞう)がん 喫煙、飲酒
乳がん 初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、妊娠・出産がない、高齢出産、飲酒
子宮がん ヒトパピローマウイルス感染(子宮頸がん)
前立腺がん 高齢、前立腺がんの家族暦
膀胱がん 喫煙、職業性発がん物質への暴露

(国立がん研究センターがん情報サービス「がん種別リスク要因と予防法」をもとに作表)

これまでの研究から、がんの原因の多くはたばこや飲酒、食事などの日常の生活習慣にかかわるものだとわかっています。生活習慣や環境は個々によって異なりますが、生活習慣の改善によって多くのがんが予防できることが明らかになりつつあります。社会全体の対策として、偏(かたよ)りのない科学的根拠に基づくがん予防法の見極めが、今後の重要な課題です。

再発と転移

予防がかなわず、がんを発症してしまった場合は、できる限り早期にがんの診療を専門とする医療機関を受診することが大事です。多くの場合、早期であるほど、治癒する確率が高くなります。しかし、がんは、治療後に一旦消えたように見えても、いずれ再発してくることが少なくありません。再発には転移も含まれます。

一般に、5年生存率が治りやすさ・治りにくさの目安とされています。がん部位別に5年生存率を調べた研究によると、皮膚がん、前立腺がん(男性)、甲状腺がん、乳がん(女性)は80%を越えており、概して予後良好ながんといえます。しかし、5年生存率が非常に低いがんもあります。すい臓がんは男女とも約7%で、きわめて治りにくいことがわかります。胆のう・胆管がん、肝臓がんも30%を下回っています

がん検診の重要性

喫煙などの発がん要因を避けて、がんの発症を予防することが望まれますが、生活習慣の改善だけでがんを完全に予防することは困難です。そこで、がん検診の受診が勧められています。これまでの研究から、胃がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がんの5つのがんでは、それぞれ早期に発見できること、治療により死亡率を低下できることが証明されています。

表1.各がん検診の検診方法
検診対象となる臓器 効果が証明されている検診方法
胃X線検査
(胃内視鏡検査は2014年に有効性評価に基づく胃がん検診ガイドラインが見直され、一次検診の方法として推奨された)
胸部X線検査とハイリスク者への喀痰細胞診の併用
乳房 視触診とマンモグラフィ(乳房X線検査)の併用
大腸 便潜血検査、大腸内視鏡検査
子宮頸部 子宮頸部細胞診

(日本対がん協会のHP記載内容をもとに作表)

がん検診によってがんが見つかる人(精密検査でがんと診断される人)は、乳がん検診で受診者1万人当たり25人、大腸がん検診で16人と報告されています(日本対がん協会2012年度調査)。がん検診には、がん以外の病気の発見・治療につながるというメリットもあります。

がん検診にはがんの早期発見以外に、がん以外の病気の発見・治療につながるというメリットもあります。一方で、がん検診の判定・診断の結果が100%正しいというわけではなく、がんの場所や種類によっては見つけづらいことがあり、見落とすこともあるのが現状です。また検査によって身体に負担がかかってしまうことがあります。検診を受ける前に十分に説明を受けて、内容をよく理解したうえで、健康と安心のためにがん検診を利用してください。

がんの標準治療

「標準治療」とは

標準治療とは、科学的根拠に基づき推奨される治療です。

がんと診断され、治療することになったら、医師は一般に、「標準治療」とされている治療法を勧めます。標準治療とは、科学的な根拠に基づいて、現在利用できる最良の治療であることが証明されている治療です。標準治療が複数あることもありますが、がんの種類や進行の程度にふさわしい標準治療が提示されます。まずはこの標準治療について、医師の説明を十分聞き、納得したうえで治療法を決めるのがよいでしょう。

標準治療は、いわゆる最先端の治療とは違います。新聞やテレビでは「最先端の治療」として、様々な新しい治療法が紹介されていますが、「最先端の治療」が必ずしも最も優れている治療とはいえません。「最先端の治療」は、効果、安全性を検討する臨床試験などによって、それまでの標準治療よりも優れていることがわかった時点で、専門医らによって「標準治療」と位置づけられることになります。

医師から標準治療が示されても、「もっと別の治療法があるのではないか」と思うかもしれません。治療法の選択にあたって、別の医師の考えを聞きたいのであれば、セカンドオピニオン(担当医以外の医師の意見)を求めることができます。セカンドオピニオンを受ける場合は、担当医に紹介状や検査記録などを用意してもらいます。セカンドオピニオンが得られたら、それを参考に、担当医と再び治療方針について話し合います。

がんの標準治療とは基本的に、「3大治療」と呼ばれる手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療を指します。

手術

手術は、メスなどを使って、がんを切除する治療法です。がんの取り残しがないように、必要に応じてがんの周囲にある正常な組織やリンパ節も含めて切除します。早期に発見されたがんでは、多くの場合、手術が最も効果的な治療法になります。例えば、転移のない早期胃がんであれば、手術により5年生存率が9割近くになっています。

手術は体に大きな負担をかけますが、最近は負担を少なくする様々な方法が開発されています。例えば、内視鏡や腹腔鏡を使った手術です。胸やお腹を大きく切り開く必要がないため、入院期間を短縮できるメリットもあります。内視鏡手術は主に早期がんが対象です。胃がん、大腸がんなど、消化管のがんを中心に広く行われています。

図1.内視鏡手術の方法
(小林正伸著「やさしい腫瘍学」p154より)

腹腔鏡手術は、お腹の皮膚に5~10ミリ程度の孔を4~5か所開けて、そこから小型カメラ(腹腔鏡)と専用の手術用具を入れ、お腹の内部を手術室のモニターで見ながら手術する方法です。大腸がん、子宮体がんなどが対象となります。手術の傷は小さくて済みますが、合併症の危険性もあるため、高度な技術を持つ専門医が行います。

図2.腹腔鏡手術の方法
(小林正伸著「やさしい腫瘍学」p156より)

化学療法(抗がん剤治療)

がんを手術しても、その後再発することも少なくありません。手術では目に見えない小さながん細胞が残ることがあり、それが増えてしまうのです。また、がん細胞は血液やリンパの流れに乗って、離れた臓器に転移することがあります。

そこで、抗がん剤を投与して、がん細胞を攻撃する化学療法が行われます。手術の対象にならない進行がんでは化学療法のみを単独で行うこともあります。抗がん剤は、副作用を最小限に抑えながら最大限の効果が得られるように投与します。最近は、白血球減少、吐き気などの副作用を軽減する支持療法が進歩したため、副作用で中止になるようなことは以前より少なくなりました。また、外来で行う場合が増えています。

近年、分子標的治療薬を用いた治療も広く行われるようになりました。従来の化学療法は、主にがんの部位(例えば肺がん)ごとに有効な抗がん剤を組み合わせて投与するのに対して、分子標的治療薬は投与する患者さんのがん細胞に特徴的な分子レベルの異常を標的として攻撃する薬です。がん細胞を狙った治療であるため、正常な細胞への悪影響が比較的小さく、副作用も少ないと考えられています。ただし、病状や薬剤によっては重い副作用が出ることもあります。分子標的治療薬には、その薬剤が有効かどうかを投与前にある程度予測できるというメリットもあります。

放射線療法

放射線を照射することにより、がん細胞の増殖を抑える治療法です。照射の方法は主に、体の外から照射する外部照射と、放射線を発生する小さな線源を体内に入れて照射する密封小線源治療の2つがあります。

標準治療として行う放射線治療は、治癒を目指す根治治療と、症状の軽減を目指す緩和治療に分けられます。根治治療は、脳腫瘍、頭頸部領域のがん(舌がん、咽頭がんなど)、肺がん、乳がん、食道がん、子宮頸がん、前立腺がん、悪性リンパ腫などに行われます。緩和治療は、骨や脳への転移による症状、がんによる神経、血管の圧迫に伴う症状などを軽減する目的で行われます。

先進医療

標準治療(手術、化学療法、放射線)は、公的医療保険が適用される保険診療です。しかし、公的医療保険が適用されないがんの治療法もたくさんあります。そのなかには、優れた効果が期待される新しい治療法も含まれています。ところが、保険が適用されない治療を受けようとすると、保険診療であるはずの標準治療や診察、検査、入院などの費用もすべて保険適用外となってしまいます。日本では、保険診療と、保険が適用されない自由診療とを併用する混合診療が原則認められていないからです。医療費はきわめて高額になり、混合診療としたところで、それほど治療が受けやすくなるわけではありません。

そこで、こうした仕組みの例外として、公的医療保険が適用されない医療のうち、厚生労働大臣が特別に定めた医療(先進医療)については保険診療との併用を認めるという制度が作られました。これを先進医療制度と呼びます。先進医療と認められた医療を受ける場合、先進医療にかかる費用は全額自己負担ですが、一般保険診療と共通する部分には公的医療保険が適用されます。

先進医療については、厚生労働省のホームページを参照ください。